公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)は、世界各国のサッカーリーグと知見を共有し、WEリーグが世界一のリーグになるために国内関係者およびメディアを対象として、定期的に勉強会を開催しています。
第1回 アメリカ女子サッカー事情勉強会
第2回 La Liga 勉強会「スペインの女子サッカー戦略」
第3回となる今回は、イングランドサッカー協会(The FA)より講師を迎え、イングランド女子スーパーリーグ(WSL)についての勉強会を以下の通り実施いたしました。
日時:2月20日(火)19:00~21:00(質疑含む)
開催方式:オンライン開催
講師:キャサリン・ローリー The FA WSL マーケティングコミュニケーション本部長
参加者:約70名(WEクラブ・なでしこリーグクラブ、JFA関係者、審判、他競技団体関係者、メディア、など)
WEリーグは、2022年にThe FAとパートナーシップ協定を締結しており、両国の女子サッカーのさらなる展開に向けて知識や経験を共有し、様々な交流を図っています。
2011年にWSLが開幕。完全プロ化やリーグ構造変革(クラブライセンス変更やアカデミー義務化など)を経て、2018/2019シーズンにはタイトルスポンサーとして国際金融グループ「Barclays」と契約を締結。コロナの影響も大きい中であったが、2021/2022シーズンには有料テレビ放送局「SKY」、イングランド公共放送局「BBC」と大型の放映契約を締結しました。さらにイングランド女子代表のUEFA WOMEN’S EURO England 2022優勝により女子サッカーの人気が沸騰。2024年8月にThe FAからWSLは独立し新しい運営体制でスタートを切る予定となっています。
②WSLが2022/2023のリーグ戦に向けて実施した施策
リーグとクラブは、UEFA WOMEN’S EURO England 2022終了後のリーグ開幕に向けて後述の準備をしてきました。開幕の週にはビッグマッチを大きなスタジアムで組み、それを大会期間中に発表することで興味関心を引くようにしました。また、クラブには少なくとも1試合以上、大きなスタジアムでの試合開催を義務付け、クラブはファン・サポーターのデータベースを収集・分析をし、試合当日の観戦体験を強化。初めて観戦をするファン・サポーターの引き留めに注力しました。そして、大会で活躍した選手たちを中心に大規模なキャンペーンを展開し、国際的なスター選手を毎週WSLで観ることができることをアピール。ナイキを始め、新しいパートナー企業ともキャンペーンを開催し、Z世代を中心とした若年層に刺さる施策を実施しました。
③WSLのマーケティング戦略
マーケティング戦略では、デジタルと放送の視聴者増加、ブランド認知度向上、観客の持続的な増加、の3点を優先事項としました。その結果、2022/2023は平均観客数が+173%(5000人超)となるなど飛躍的な成果をあげました。
さらに2023年のFIFA女子ワールドカップでは、大会の開始前・実施中など4つのフェーズ(IGNITE:点火、SUSTAIN:維持、PEAK:ピーク、LAUNCH:ローンチ)に分けて新しいアプローチを試み実施しました。
④NEWCO
WSLはThe FAから完全に独立して運営をしていくために、2024年8月に新しい会社として「NEWCO」(仮称)を設立します。NEWCOは、少年少女のスポーツ実施機会の創出・若年女性の自己肯定感の向上・エリートアスリートのヘルスデータ活用・女性アスリートのロールモデル化、などを推進していくことで女子サッカーがサッカーを変えることができると信じて準備をしています。「NEWCO」のミッションは、世界で最も競争力があり、エンターテイメント性の高い、クラブの競技会を作ることに加え、より公平な社会形成に寄与することです。
今後の女子サッカーおよびリーグの発展に向けて、「Excitement」を追求し、新たなスタートを切ろうとしています。
2022年にカタールでMoUを結んだ際、The FAの皆様から女子サッカーを盛り上げるためにずっと苦労をされてきたことを聞いていました。そして2023年のFIFA女子ワールドカップのタイミングで行われたシドニーでの会議で、イングランド女子スーパーリーグの担当の方のお話しを聞いて、丁寧な取り組みや周囲との協力関係の中で、今の盛り上がりにつながっていることを知りました。今回の勉強会はその内容を具体的にあらゆるステークホルダーの方へ共有いただいた素晴らしい機会となりました。
日本の女子サッカーは2011年のFIFA女子ワールドカップ優勝以来、社会的にも認知され、高い競技レベルを維持していますが、国内での商業的盛り上がりにはまだ至っていません。2021年に発足したWEリーグがそのポテンシャルを開花させるきっかけになるよう、今回の学びを参考にしながら、自分たちならではの魅力に自信をもって打ち出していきたいと改めて感じました。
また世界各国の女子サッカーリーグが連携して、女子サッカーの地位向上につなげていき、そこに日本も貢献できるよう努めていきたいと思います。