NEWS

インタビュー
2022.11.03
【WE INTERVIEW #54】~岸みのり選手(ちふれASエルフェン埼玉)~


キャプテンシーの原動力はチームプレー

キャプテンマークがしっくり来るのも当然だ。これほど生粋の“キャプテン”はいないのではないだろうか。その裏には計り知れない努力がある。“苦手”を“武器”に変えてしまえるほどのパワーを注ぐことができる。それが岸みのりの本当の強さなのかもしれない。チームは今シーズン、新監督のもとで変貌を遂げようとしている。今日も岸は自らの姿勢で仲間を鼓舞しているに違いない。

——サッカーは小学2年生から始めました。楽しさの種類は徐々に変わりましたか?

最初はただみんなとボールを蹴っているのが楽しい!という感じで、だんだんとサッカーの奥深さを楽しく感じてきました。私はサッカーでチームプレーを一番大事にしています。仲間と一緒に喜べて、仲間と一緒に悔しい気持ちを共有できることは、ここまでサッカーを続けてくるにあたって私にとっては一番大切なことでした。

——サッカー選手として一番成長した時期は?

数々ありますが、強いて挙げるなら大学生の時です。東洋大学出身で、実は一期生なんです。一期生なので当然部のルールもないし、先輩を見て過ごすことができなかったので、すべて自分たちで作り出さないといけなかった。そのキャプテンを任されていたので、精神的な成長という意味では大学の4年間は大きかったですね。

——ゼロから立ち上げるチーム作りで一番大変だったのは何ですか?

私は監督から誘われて、大学で日本一を獲りたいと思って行きましたが、全員がそうだったわけじゃなくて、そこにはギャップがありました。強くなるためには我慢しなきゃいけないこともあると思いますが、そうでない考えもあるわけで。まずどこを目指すのかによって、決まってくるルール、行動がある。たくさん話し合いました。そこでやめてしまう仲間もいて、苦しい時期でもありましたが、同期が私と同じ熱量を持って一緒に悩んで苦しんでくれたので、本当に助けられました。

——日本一を目指した4年間でした。

大学で日本一を目指すためには、当然インカレ(全日本大学女子サッカー選手権大会)に出場しないといけない。私たちは大学3年生の年までに2部で優勝して1部に昇格しなければ、インカレに出場することすらできませんでした。なので3年生の一年間は特に「そんなことしていたら1部に上がれないぞ!」とコーチから叱咤激励を受けました。必死に食らいついた結果、2部優勝を果たしてインカレ出場に辿り着きました。大会の結果はベスト8でしたが、死に物狂いで絶対に昇格する!と頑張った日々は、今でも自分の自信になっています。

——EL埼玉に入団後、大和シルフィードへ移籍しました。別のサッカーに触れる経験もまた刺激を受けたのでは?

EL埼玉の最後の年はほとんど試合に出ていなかったので、試合を経験できたことが良かったです。チームによってサッカーの色が全然違うと感じました。ここで得た経験は本当に大きくて、あの2年がなかったら今の私はないです。

——大和でもキャプテンでしたね。

はい。EL埼玉と対戦することもありましたが、燃えましたね(笑)。私たちは上手くはないけど、チーム力で上回ろうとみんなに言っていて、その年のアウェイ戦で勝つことができました。大和が勝つなんて誰も思っていなかったはず(笑)。私以上に仲間がすごく喜んでくれて、このチームに来て良かったなと思いました。

——岸選手はどこでサッカーをしても、キャプテンシーと仲間の2大要素が強力ですね。

そうなんですよ!私、サッカーの技術は本当に全然足りていないのですが、心の部分でここまで来られたと自己分析しています(笑)

——今季のWEリーグ開幕ゴールは岸選手でした。得意のヘディングが炸裂しましたね。

あの時は、絶対にボールが来る!と思いました。みんな前に飛び込んでいったけど、そこじゃないと思いながら動いたらボールが来ました。

▼岸みのり選手のWEリーグ開幕ゴール!



——熱いことで有名な田邊友恵監督の指導や伝え方を少し教えてもらえますか?

ミーティングが多くて、その都度細かく伝えてくれます。田邊監督ならではと感じるところは、試合前のミーティングで必ずどこからか名言を持ってきてくれるんです。開幕戦はアントニオ猪木さんの言葉で「道は開ける・・・」みたいな・・・。長くて覚えていなくてすみません(笑)。それで、最後にみんなで「1.2.3.ダー!」でパワーを入れました。監督はその日すごく緊張していたと思います(笑)

——ではここでみなさんにしている質問を。今後どんなWEリーグにしていきたいか、岸ビジョンを聞かせてください。

WEリーグを“当たり前”な存在にしたいです。日本にはJリーグがあって、サッカーを好きじゃない人も誰でも知っている。美容院とかで「サッカーしているんです」と言った時に「ああWEリーガーなの?」と言われるのが“当たり前”になるのが理想です。

私は今シーズンから「観ている人の心を動かすサッカーをしたい」と言い続けています。どうやって心を動かすか——まずは勝つ試合を見せることで観る人の心を動かせると思います。でもそれだけじゃなくて、戦う姿勢や一生懸命さは大事にしたい。単に上手いプレーを見せるんじゃなくて、選手一人一人、チームの戦う姿勢を見てほしいなと思います。

——個人的に狙っているプレーは?

開幕戦でゴールを決めることができましたけど、センターバックでも得点に絡んでいきたい。もっともっと点を獲っていきたいですし、守備の人間としては対人で負けないことと粘り強く戦うことは私の強みだと思うので、そこを見てほしいです。

——ヘディングはもともと強かったんですか?

実は、ヘディングはすごく苦手でした。でも大学で人数が足りず、身長も私が一番高かったのでやるしかなかった。毎日コーナーキックを蹴ってもらってゴールを決める練習をしましたし、跳ね返す練習もしました。猛練習をして1年後にやっと「ヘディングが得意です」と言えるようになりました。

——新たな得意分野を増やすために取り組んでいることはありますか?

キックは今練習しています。ゴールチャンスに繋がるような精度の高いキックを目指しているので、ぜひ楽しみにしていてください!

(インタビュー・構成=早草紀子)



【プロフィール】

岸みのり(きし みのり)

1994年10月14日生まれ、東京都出身

DF、背番号20

東京久留米ひばりSC → FC.BELTA → 飛鳥高校 → 東洋大学 → ちふれASエルフェン埼玉 → 大和シルフィード → ちふれASエルフェン埼玉

PARTNERS