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2022.10.02
[マッチレビュー]3点ビハインドを覆した浦和がWEリーグカップ初代王者に!

浦和 vs 東京NB

2022-23 WEリーグカップ 決勝 ~EMPOWERMENT MATCH~

10/1(土)16:00キックオフ 味の素フィールド西が丘


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三菱重工浦和レッズレディースと日テレ・東京ヴェルディベレーザによる頂上決戦は、決勝の舞台にふさわしい激闘となった。
会場は味の素フィールド西が丘(東京)。3,546人の観客が見守る中、キックオフの笛が鳴った。

互いに連動した守備とパスワークで見せ場を作ったが、先に主導権を握ったのは浦和だ。MF猶本光、MF安藤梢、MF柴田華絵、MF塩越柚歩、MF清家貴子ら、中盤の選手たちが流動的に動いてボールを動かし、FW菅澤優衣香をターゲットにゴールへと迫った。しかし、東京NBも帰陣は早く、シュートコースはしっかりと限定していた。
前半16分、清家がスピードあふれるスプリントとドリブルで右サイドを突破したかに見えたが、東京NBのDF岩清水梓が絶妙なコース取りで間合いを詰め、クロスをブロック。見応えのある1対1の駆け引きにも歓声が沸き起こった。

均衡が破れたのは、前半25分だ。東京NBのFW藤野あおばが右サイドからクロスを入れると、逆サイドのMF北村菜々美がダイレクトで折り返し、中央に走り込んだFW植木理子がダイビングヘッド。クロスバーに跳ね返ったボールを植木が再び頭で押し込み、先制に成功した。
さらに、その4分後には藤野が前線からプレッシャーをかけてボールを奪取。素早い切り替えでショートカウンターを仕掛けると、藤野の折り返しを植木が決めてリードを2点に広げる。東京NBが少ないチャンスを生かし、一気に流れを引き寄せた。
反撃のきっかけがほしい浦和は、左サイドバックのDF佐々木繭やボランチの柴田も積極的な攻撃参加で厚みをもたらし、セットプレーからもチャンスを窺う。しかし、東京NBは初出場のGK黒沢彩乃のファインセーブも光り、ゴールを割らせない。

後半も、目が離せない攻防が続いた。50分、東京NBのMF岩﨑心南がペナルティエリア内で左足を振り抜いたが、浦和のGK福田史織がファインセーブ。その2分後には、逆に猶本のダイレクトボレーを黒沢が弾き出した。その後、東京NBは67分と68分にも植木とDF宮川麻都のシュートなどで流れを引き寄せると、72分にフリーキックの流れから3点目を決める。
右サイドでDF村松智子が相手と競り合いながら上げたクロスが、GK福田の頭上を越える形でゴールネットを揺らしたのだ。残り時間を考えれば、このゴールは浦和にとって重くのしかかった。しかし、菅澤は「1点取れば自分たちのペースになると思っていた」という。

そして、ここから浦和が猛反撃を開始する。「喉から点が出るほどほしかった」(楠瀬直木監督)という状況で、清家を後半途中から最前線に上げ、菅澤との2トップにしてボールを集めた。これまでにも数多くの成果を生み出してきたそのオプションが、75分に威力を発揮する。

相手陣内左サイドでパスを受けた清家が、そのままドリブルでゴールに猛進。追いすがるディフェンス陣を振り切り、そのまま右足でゴールネットを揺らした。

「(ゴール裏の)浦和サポーターが簡単には諦めさせてくれない雰囲気をひしひしと感じて、煽(あお)られる感じでシュートまでいきました」(清家)

このゴールでスイッチが入った浦和は、その1分後、コーナーキックにDF石川璃音が飛び込み、クロスバーに弾かれたボールを塩越が右足でシュート。東京NBが決死のブロックを見せるものの、クリアを安藤がゴールに蹴り込み、すかさず一点差に迫った。
東京NBはMF木下桃香、FW山本柚月とフレッシュな選手を投入するものの、浦和の流れは変わらず。83分にはペナルティエリア内の混戦で東京NB側にハンドのファウルがあり、浦和がPKを獲得。これを菅澤が冷静に決め、わずか9分間で試合は振り出しに。
試合は3-3で、決着はPK戦に突入。後攻の浦和は4人全員が決め、GK福田が1本を止めて、PK戦を4-2で勝利。ゴールラッシュとなった激戦を制し、WEリーグ初代王座に輝いた。

楠瀬監督は、「若手選手も試合に出た中で優勝できたのは、非常に大きい財産になると思います」と、大会を通じた収穫を口にした。今季はチーム力の底上げを図る中で、グループステージから多くの選手を起用。システムやポジション変更など、新たなチャレンジも見せてきた。5試合で15得点8失点と失点も少なくなかったが、強力なコンビネーションを生かした得点力が、今季初タイトルへと結実した。
勝利の立役者となった清家は、「カップ戦を通して、追いつく試合がすごく多かった。勝負強さが生まれて、最後で勝てるチームになってきたのはいい成長だと思います」と、喜びを口にした。

一方、東京NBの竹本一彦監督は、試合後の第一声で「悔しさにまみれています」と、心境を吐露。「リーグに向けては大きな経験をしたと思うので、この悔しさを糧にして前を向いていきたいと思います」と語った。岩清水も、「ゲームの運び方は、もっと経験を積んでいかなければいけないと思います」と、チームの伸びしろに目を向けた。

両者のライバル関係は、今季のリーグでも優勝戦線を盛り上げそうだ。また、10月6日と9日に行われるなでしこジャパンの国際親善試合では、両チーム合わせて8名がメンバーに選ばれている。

全国各地で熱戦が繰り広げられてきたWEリーグカップ。ここから3週間の調整期間を経て、10月22日にはいよいよリーグが開幕する。2年目のWEリーグに乞うご期待!

(取材・文=松原渓)

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