WEリーグでは、ビジョンに掲げる「世界一の女子サッカー」を実現するため、WEリーガー向けに「FOOTBALLを学ぼう」セミナーを隔週で開催します。第六回は、12月6日、JFAフィジカルフィットネスプロジェクト菅野淳リーダーによる「プロ選手として知っておくべきこと」。選手25名を含む45名が参加しました。
サッカーは常に進化し続けています。現代サッカーではよりスピーディーに、よりタフに戦うことが求められています。それは女子でも同じです。WEリーグを観に来るお客さんの中には、スーパープレーはもちろんのこと、選手たちのハードワークを楽しみに会場に足を運んでいる方もいることでしょう。
そのようなファン・サポーターの期待に応えるためにも、チームの勝利に貢献するためにも、選手としてはハイレベルなパフォーマンスを発揮し続け、さらにキャリアを築いていくにはそれを維持し、一年でも長くプレーすることを目指さなければなりません。
しかし、ひとことにハードワークといっても、そこにはそれ相応の準備と回復が必要です。そこで今回は三つの観点からお話がありました。一つ目はハードワーク、二つ目はハードプレパレーション、そして三つ目はハードリカバリーです。
一つ目のハードワークは、常日頃からチームのトレーニングやゲームで求められていることです。判断を伴ったスピードアップや、1対1から複数での数的同数までのデュエルなど、試合中のあらゆる局面で様々なフィジカル能力の発揮が求められます。日本人のフィジカルは数年前と比較すると大幅な進化を遂げているものの、なでしこジャパン(日本女子代表)の世界の舞台での戦いを見ると、「強国と比較するとまだまだ足らない部分がある」ということで、菅野さんからパワートレーニング基準の提案がありました。これは、テクニカルなスタイルからパワーサッカーに変えていくということではなく、目指すサッカーを追求しながらも接戦の勝利を手繰り寄せるために、走るための筋力を強化し、いかにボールを奪われないか、いかにして少しでも早く相手よりボールに触るかなどを突き詰めていく必要がある、ということです。五輪やW杯、そしてWEリーグの映像を見ながら、それらの課題を全員で共有しました。
二つ目はハードプレパレーションです。プレパレーションとはトレーニングやゲームの前の準備のことです。
走るためには筋力に加えてエネルギーが必要です。ガス欠になった車が動かないのと同様に、90分間高強度のランニングを繰り返すためには、それにふさわしい蓄えが身体になければ動かなくなってしまいます。そこで、身体を動かす前と動いた後に、必要な栄養を必要な分だけ摂取することが重要です。
また、チーム全体のトレーニングが始まる前に個人で行うことのできる、傷害予防のセルフトレーニングも紹介されました。すでにこういったことを実践しているチーム・選手がほとんどだと思いますが、女子選手に多い前十字靭帯損傷等の長期の離脱を伴う怪我を予防するために、捻りを入れる運動や、ダイナミックに動かす運動が大切だと説明があり、必要性を再認識しました。
三つ目はハードリカバリーです。試合やトレーニングの直後から、次の活動への準備は始まっており、リカバリーはプレパレーションと重なる部分も多く存在します。その中でも、身体を良い状態に戻すという意味合いで推奨されているのがアイスバスの活用です。試合後の身体のほてりによる無駄なエネルギー消費を防ぐこと、また、血管収縮の作用を使って疲労物質を極力早く除去するために、非常に有効な方法です。また、プレパレーションでも上げられた食事に関しては、リカバリーの観点からは、試合後に体重をいち早く戻すことの重要性が挙げられました。水分と食事をしっかりと摂取し、翌日には戻っている状態にすることが理想というお話でした。
毎週末負荷の高い激しい試合を戦うWEリーガー達ですが、大切なことは、疲労から完全に回復した状態で次の試合に臨むということ。鍛えることと回復することはセットで考えていかなければなりません。
最後に、一年間のシーズンでいつどんなトレーニングが必要かについてお話をいただきました。2月の皇后杯決勝やリーグ再開までは中断期間となっています。その期間をどうとらえるか。具体的に何をするべきか。菅野さんからよい助言が聞けたのではないでしょうか。
質疑応答では、複数の選手からまさに今直面している状況に関するタイムリーな質問が多く上がりました。今回参加した選手には、試合にコンスタントに出場している選手もいれば、出場機会を求めて奮闘している選手、さらには怪我からの復帰に励む選手など様々な立場の選手が存在します。それぞれが置かれた状況で自分がどのように行動を起こすのか、改めて考え直す時間になったようです。
今回の講義では、自分のプレーのパフォーマンスの向上だけでなく、将来的に長くサッカーをするために必要なフィジカルについての知識について学ぶことができました。また、試合期と試合のない期間では行うトレーニング強度を変えていくなど、指導者の方が考えてくれているトレーニング内容の意図をより深く理解することができました。今回学んだ知識をしっかり活かしてトレーニングに反映させていきたいと思いました。