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インタビュー
2022.01.13
【WE INTERVIEW #36】~田中美南選手(INAC神戸レオネッサ)~


悔しさをバネにゴリゴリ感を押し出したFWに

前線においても献身的な守備を厭わない。田中美南のプレーは貪欲さの塊だ。昨今の緻密な展開のサッカーのなかで彼女のような貪欲さをゴール前で発揮できるストライカーが少なくなった。自分に今できることは何か――日テレ・東京ヴェルディベレーザからINAC神戸レオネッサへの移籍、そしてオリンピック出場を掴むために選んだドイツへの挑戦。田中美南が貫いてきた姿勢はWEリーグの舞台でも不変だった。

——もともとボランチでプレーしていたということですが、いつ頃からフォワードに切り替わりましたか?

ベレーザの下部組織のメニーナにいる時にFWになったんですけど、最初はゴールへの執着心があまりなくて・・・。でもチームを引っ張る立場になったときに、勝つ=自分がゴールを決めることなんだと自覚しました。その気持ちが生まれたのは、ベレーザがリーグ優勝しながら私は得点王になれなかった2015シーズンです。得点ランキング2位でしたが、優勝チームに得点王いないのはダサいじゃないですか。それまで私は得点王を取りたいと口にしていなかったんですけど、その翌年から「得点王を目指す!」と言うようになりました。

——有言実行でしたね。田中選手といえば世代別代表としても活躍し、順調にステップアップしてきたように見えますが、だからこそ苦しんでいる時期もありました。

どの世代でも怒られないことはなかったし、悩みもしたけど、“それなり”だった。だから2018年のFIFA女子ワールドカップ(フランス)メンバーに入れなかったことは自分にとって一番大きな出来事でした。リーグで活躍していれば代表には入れるでしょ、と最初は思っていたんです。でも違った。それまで代表として結果を出していなかったので受け入れないといけない。そこに考え方をシフトチェンジしていきました。

——そこからプラスにするために取り組んだことは?

正直なところ、海外に出た方が早いとは思いました。海外の選手と対戦する度に身体の強さとスピードという同じ壁に当たる。でもフィジカル要素はパーソナルトレーナーを付けて取り組むことで翌年から得点を重ねられてきたし、海外チームとの対戦でも当たり負けしないようになってきた実感はありました。

——東京オリンピックメンバーになるために、できる努力はすべてしていましたよね。WEリーグ開幕前までのドイツへの移籍というのもその一つでした。

海外の選手と対戦することを日常にしたことで、なでしこジャパンとして戦う時に感じていた“受け身になってしまう瞬間”がなくなったと、オリンピックで実際に戦ってみて実感しました。でも結局、オリンピックでは悔しさしか残らなかった。どうしてもメダルが獲りたいと思いました。

——そういった経験を経て感じるWEリーグの魅力とは?

日本の良さである献身的なプレーや、諦めない姿勢が見えるリーグです。男子と比べて迫力は減るかもしれないけど、初めて観た人は「思ったより女子サッカーって激しいんだね」とか「思ったより上手いんだね」と言ってくれるので、実際に“観てもらう”ことが大事なんだと感じます。

——INAC神戸はそうしたプレーを披露できるようになってきました。

ヤマ(山下杏也加選手)の加入は大きくて、後ろのビルドアップがすごく安定しました。彼女自身のセービングにも助かっていて、失点しないことで攻撃も最後まで粘ることができます。

——そこへ星川敬監督の分析力も加わりました。

星川さんの発言は芯を捉えている気がします。ちょっと強い言葉であっても、「でもその通りだな」と思わせるものがある。この前も、「自分たちはしっかりと補強して、こういうサッカーをしているから首位という順位は理解できる。でも、ここで満足するんじゃなくて見るのは世界だ」と言われて、私にとってすごく納得がいきました。星川さんの中ではリーグや対戦相手もそうだけど、“世界”を視野に入れていると伝えてくれるので、そこにみんなが意識を向けられて良い雰囲気になっていると思います。

——ではここで、みなさんへしている質問を。世界を視野に入れながら戦っているWEリーグを、田中選手は今後どんなリーグにしていきたいですか?

各国のスター選手が集まってくるリーグにしたい!そうすればまた激しさも面白さも変わってくる。リーグ優勝チームがチャンピオンズリーグに参戦できるといいですよね。その土壌が国内にあれば、海外でプレーしている選手たちが戻ってくることもあるだろうし、ファン層も増えると思います。

——どこに注力すれば海外の選手が来たいと思ってくれるでしょうか?

やっぱりなでしこジャパンの成績は必須だと思います。ワールドカップやオリンピックで優勝した国のメンバーの多くがその国でプレーしているとなったら、興味が湧くじゃないですか。DAZNで配信をしているので観る機会は増えているだろうし、日本特有のパスサッカーや崩し、ゴール前での迫力のところとか面白い場面が見られれば自然と行きたいなって思うはず!

——そういう意味では1月にはワールドカップ予選を兼ねた女子アジアカップが開催されます。日本だけでなく世界へのアピールにもなります。

この大会では貪欲さを出していきたいです。もうあからさまに(笑)。昨年11月のオランダ遠征で対戦したチームから「日本の攻撃は怖くない」と言われてしまってすごく悔しかった!でも、そうだなとも思う。もっとゴール前に迫るプレー、中央に入って強引にシュートに行くべきだと思ったので、バランスは見つつも率先してやっていきたいです。

——WEリーグでもなでしこジャパンとしてもやるべきことは同じですね。

そうですね。WEリーグ前半は、コンディションの問題でなかなか思うようなプレーができない試合が続いてしまったので、もっとレベルアップした状態で後半戦に臨むつもりです。INAC神戸の良さであるタテの速さや迫力は国内一だと思っています。そこをさらに加速させるような、淡泊にならず厚みを持たせられるような攻撃を仕掛けて、多くのゴールシーンを届けたいです。狙っているのは得点王!まだ試合は半分残っているので、自分のコンディションが上がってくれば狙えると思っています。応援よろしくお願いします。

(インタビュー・構成=早草紀子)



【プロフィール】

田中美南(たなか みな)

1994年4月28日生まれ、タイ出身

FW、背番号9

川崎ウィングスFC日テレ・メニーナ → 日テレ・ベレーザ → INAC神戸レオネッサ → バイエル・レバークーゼン → INAC神戸レオネッサ

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