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インタビュー
2021.12.16
【WE INTERVIEW #34】~中村楓選手(サンフレッチェ広島レジーナ)~


冷静な観察眼と強靭なメンタルで新境地を拓く

中村楓は器用な選手ではないが、目の前にあるものから決して逃げない。ブレない強さがあるまっすぐなアスリートだ。右ひざ前十字靭帯損傷及び外側半月板損傷から立て続けに左ひざ前十字靭帯損傷と約2年間をリハビリに費やしたときでさえ、その強さにブレはなかった。周りを活かそうとすることで磨きがかかった広い視野と冷静さがどんなときも彼女を支えてきた。そんな中村が今、サンフレッチェ広島レジーナで再び花開こうとしている。

——いまの中村選手の土台を作った時期はいつですか?

出身の岩手は女子サッカー人口も少なく、整った環境ではありませんでした。その中で常盤木学園へ進学して、親元を離れての寮生活ということもあって、高校3年間は自立心を確立できた時期でした。最初は周りについていくだけで精一杯だったんですけど、先生に「お前は真面目過ぎるんだ。時には反骨心を持ってもいいんじゃないか」と言われて、言われたことをしっかり守り過ぎているというか、そこに集中しすぎていたのに気づきました。それで、自分にブレないものを持つことが大事だと感じました。

——そこからアルビレックス新潟レディースへ入って11年。自分のサッカーが変わったと感じるところは?

最初の3年間くらい教わった奥山達之監督は個人技術をすごく大事にしていました。自主練に付き合ってもらって、そこで駆け引きやずる賢さみたいな個人戦術を初めて学びました。苦しくもありましたが、新しいものが身についていく感覚がありました。

——レギュラーを掴んでいた時期に2度も大きなケガに見舞われました。

不思議と心は折れなかったんですよ(笑)。1度目のケガのときは、膝をケガしたことがある先輩に「怪しいかもね」と言われていて、そうかもしれないと思って病院に行ったので、診察結果が出たときもショックで泣いたりとかはなく、落ち着いていました。2度目のときは、病院に行くまでの間の痛み方が1度目と同じだったので、覚悟ができていました。結構冷静なんです(笑)。あのときこうしていれば良かったと考えることには意味がない。結果は変えられないんだから、今後のことを考えようと思っていました。

——なでしこジャパンに招集されて前向きなトライをしてみたい時期でもあったと思いますが、そこも冷静に受け止めていましたか?

そうですね。自分のチームでしっかりできていないと、代表という道は全くないと思っていたので、今はまず自分のことをしっかりやろう、という気持ちでした。

——そして、11年在籍したチームからサンフレッチェ広島レジーナへの移籍という大きな決断をしました。

膝のケガが続いた後の2020シーズンも、試合復帰して4試合目くらいにまたケガをしてしまって・・・。でもまだ自分の可能性を信じたかったんです。若くはないけど、それでも自分ができることを信じたいし、もっとサッカーが上手くなりたい。広島は新規参入チームで、全員がフラットな状態で始められるので、そういうところからスタートした方がもっと成長できるかもしれないと思いました。

——その決断からもう10か月が経ちました。思いがけない成長はありましたか?

実は、広島のスタイルでもあるビルドアップは昔から苦手でした。課題なだけあってあまりうまくいかない、というスタートから、徐々にできるようになっている段階ではありますが、そこは成長かなと。

——最終ラインの守備で、最も大事にしていることは?

身体を投げ出す守備です!試合感覚やサッカー勘が上がってきていないのでまだまだですが。話して連係をとることはあまり得意ではないので、周りにいる選手が何かを感じとってくれるようなプレーをすることは大事にしていきたい。基本的には周りの選手にやりたいことを積極的にやってほしいという思いがあるので、みんなの特長をもっと観察して、私が得意なカバーリングで支えたいですね。

——広島は新規参入チームですが、統率されたサッカーに驚きました。秘訣を教えて下さい。

ここまでチームがブレずにしっかり保てているのは、近さん(近賀ゆかり選手)と福さん(福元美穂選手)の存在が大きいと思います。継続してやっていく中で、緩むときがどうしてもあります。近さんたちがそれを察知すると、みんなを集めて緩んでいるものを締めて、「次からやっていこう!」と思わせてくれる。私も個別に話をすることはありますが、これはできないです・・・。頼りすぎもダメなんですけど、二人のこういう行動があるからこそ、自分たちがやりたいサッカーを継続してやっていけていると思います。

——みなさんにお伺いしているのですが、どんなWEリーグにしていきたいか、“中村ビジョン”を教えてください。

スポーツ選手や表舞台に立つ人は、どちらかというと応援して“もらう”ことが多いじゃないですか。でも、WEリーグは応援“する”側になれたら良いと思っています。WEリーグを知ってくれた人や応援に来てくれた人、選手の活動を知ってくれた人が、もっと自分もがんばろうとか、こういうことをやってみようかな、と思ってもらえるきっかけになってくれたら嬉しいです。

——では最後に、ファン・サポーターの方へメッセージをお願いします。

広島の強みは、ビルドアップとパスワークを始動してから積み重ねてきていることです。まだまだですが、そのサッカーをブレずにやっていきます。個人的にはカバーリングと守備の対人はもちろん、広島らしいサッカーに沿ったビルドアップも見せていきたいと思っていますので、ぜひ注目を!なかなか自分たちの思うサッカーと結果がつながらずに足踏みをするときもありますが、自分たちの強さを積み重ねていけるようにがんばりますので、ぜひ会場に足を運んでください!

(インタビュー・構成=早草紀子)



【プロフィール】

中村楓 (なかむら かえで)

1991年8月3日生まれ、岩手県出身

DF、背番号4

沼宮内サッカースポーツ少年団盛岡ゼブラレディース/厨川中学常盤木学園高校アルビレックス新潟レディース → サンフレッチェ広島レジーナ

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