大宮アルディージャVENTUSのピッチはいつも賑やかだ。そこにはいつも山崎円美の弾けるような笑顔がある。駆け引きはするが、一切の掛け値なしの全力プレーが彼女のスタイル。シンプルなだけに、そこには揺るぎない強さがある。全員のスタートラインが同じだからこそ、山崎が培ってきた感覚がモノを言う。移籍を繰り返し5つ目にたどり着いた大宮で、重ねてきたすべてが結実しようとしている。
——埼玉県出身なんですね。
はい。なので、サッカーは身近な存在でした。中学生になるまで女子チームがあることを知らなかったのですが、担任の先生がASエルフェン狭山FC（現ちふれASエルフェン埼玉）の監督の息子さんだったので、その縁でエルフェンに入りました（笑）
——すごいつながりですね。
そうなんです。でも実は、なでしこリーグやなでしこジャパンの存在もこの頃初めて知りました。ただ楽しくサッカーをしていて、そこを目標にしていなかったからかもしれません。中学校の部活で男子とプレーしていたおかげで、スピードでは通用していたと思います。ちゃっかり得点王を獲ることもできました（笑）。あの頃はスピードだけでやっていましたね。今は足が速い選手がたくさんいるので、そんな感覚はないですけど（笑）
——ご自身の中でのターニングポイントは？
アルビレックス新潟レディースに移籍してプレーした7年半です。移籍するまでは、ファウルを受けた相手にキツい言葉を言ってしまうような、調子に乗ったクソガキ！という感じだったのですが、新潟で叩き直されました（笑）。「人」としての第一歩というか、それまでとは180度変わりましたね。当時の奥山（達之）監督は永遠の恩師です！
——サッカー面ではどうでしょう？
AC長野パルセイロ・レディースで横山久美選手と一緒にプレーして、本当に影響を受けました。もともと知り合いでしたが、横山選手は選手としてスーパーじゃないですか。私もチームを勝たせる選手になりたいって思わされたのと、やっぱりサッカーはチームなんだなって感じましたね。
——20代前半でチームを背負うのは大変なことですね。
そういうところも含めてサッカーでも、それ以外でもいろいろ“考える”ようになりました。
——そして大宮へやってきます。決め手になったのは？
地元の埼玉でプレーしたかったのと、佐々木（則夫）総監督の存在です。則さんがなでしこジャパンの監督をしているときに何度か呼んでもらったこともあったので。
——大宮の第一印象は？
選手、スタッフの顔ぶれを見て「なにこれ！超楽しそう！」と思いました。その中で自分は全力タイプ。「みんなが走る」がチームカラーじゃないからこそ、私はそれを誰よりもやるべきだと思っています。大宮は、みんなのことが大好きだな、と思えるチームです。
——プレシーズンマッチでは、その全力プレーでスタジアムが沸いていましたね。
ホームのNACK5スタジアムはモチベーションが上がります。あれだけお客さんと近いスタジアムだと、声がしっかり聞こえる。今盛り上がっている！という瞬間がすごく伝わってきて、お客さんの気持ちが高まっているのを感じると、自分の気持ちも上がります（笑）
——ここを見てほしい！というプレーは？
点を獲る！大宮に来て点を獲る感覚は上がってきていて、練習試合でも結果が出るようになってきました。ピッチに立ったら点を取る準備はできています。
——今年の私は〇〇が違う！というものを教えてください。
今年の私はすべてを楽しめています！自分が楽しまないとダメってよく言うじゃないですか。それを現実にできていて、これは選手を続けてきて初めての感覚です。みんなで同じイメージを持って点を獲れたときは最高ですが、どんな練習でも常に楽しいと思っています（笑）。あの質問はないですか？WEリーグで一番の〇〇になる！
——実は今回からなくなったんです。
「一番ポジティブ！」と言おうと思っていたのに！
——では特別に復活ということで（笑）
お願いします（笑）。周りに聞いても私のことを“ポジティブ”だと言うと思うのですが、自分の現状を昔だったら前向きに捉えられなかったと思います。
——それは立場関係なく、大宮の選手たちのそれぞれの努力が見えるからでしょうか。こぼれていってしまう人がいないように見えます。
それはありますね。選手同士のコミュニケーションが多いので、良いものも悪いものも共有できて、チームとしての一体感があると思います。
——最後にファン・サポーターの方へメッセージをお願いします。
個人的には熱く戦う姿勢を見せるので、ぜひスタジアムまで足を運んでいただいて、ともに戦いましょう！WEリーグは新しい視点で楽しめると思います。女子サッカーってどういうものなんだろう？という、Jリーグと違う楽しみを探す気持ちで来てほしいです。スピードやパワーがない分、頭を使ったり、細かい技術があったり、ピッチを一生懸命に走っている選手を思わず応援したくなっちゃうような魅力があると思います。ピッチ外でも選手ができることがたくさんあると思うので、WEリーグならではの違いを出していければと思っています。みなさん、応援よろしくお願いします！
（インタビュー・構成＝早草紀子）
【プロフィール】
山崎円美 （やまざき まるみ)
1990年6月9日生まれ、埼玉県出身
MF、背番号7
安松FC/TSガールズ → ラガッツァFC → 所沢市立安松中 → ASエルフェン狭山FC → 浦和レッズレディースユース → アルビレックス新潟レディース → AC長野パルセイロ・レディース → ジェフユナイテッド市原・千葉レディース → 大宮アルディージャVENTUS
