2025年7月21日、WEリーグシルバーパートナーであるクラシエ株式会社がJFA サッカー文化創造拠点『blue-ing!』で「クラシエ×WEリーグコラボDE&I*1研修」を実施しました。
「クラシエ×WEリーグコラボDE&I研修」は、「①ジェンダーにおける歴史と世界情勢を知る②関係者全員でDE&Iの理解を深め、共通認識を持つ③クラシエの現実を把握し、自社のDE&Iについて不足点や具体的なアクションを考える」ことを目的としたもの。クラシエ株式会社の社員19名が参加し、和やかな雰囲気の中でそれぞれに気づきや学びの多い実りある時間となりました。
DE&Iとは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンのこと。「多様性」「公平性」「包摂性」の概念を取り入れ、企業経営などに活かしていく取り組みで、近年、さまざまな企業が積極的に活動を行っています。
スローガン「夢中になれる明日」を届けるため、挑戦することが企業風土として定着することを目指して『CRAZY KRACIE』というビジョンを掲げるクラシエ株式会社。その土台の上に『ココラボクラシエ*2』などを展開するなど、多様な価値観を知り、公平に受け入れ、誰もが活躍する職場環境の実現を目標に、人を想いつづける“クラシエならではのDE&I”を創出してきました。
こうした背景に加えてクラシエ株式会社は、WEリーグのシルバーパートナーとなったことで「WEリーグを知ると、スポーツ以上の学びがある。」という思いを持ち、『みんなが主人公になる暮らしを、WEリーグと。』という意義を掲げています。
「弊社はDE&Iを推進していますが課題も抱えている中で、WEリーグさんが掲げる女性活躍や一人ひとりが輝く、活躍するためにという思いにとても共感し、お互いのソリューションを活かした取り組みを一緒にできないかと考えました。海堀あゆみ理事からウォーキングフットボールのことを聞き、セミナーだけではなく体験できるものがあると、よりよい取り組みなるのではと思い、今回の研修のお話を進めました」とD&C推進室の黄子綾さん。
D&C推進室(D&C=Diversity & CRAZYの略)が今年3月に立ち上がったこともきっかけとなって①WEリーグ理事によるトークセミナー②ウォーキングフットボール③ワークショップという3つのセッションで構成される「クラシエ×WEリーグコラボDE&I研修」が実現しました。
セッション1では、まずD&C推進室の七森有貴室長が登壇。「クラシエのDE&I」と題し、社内の状況について伝えられました。そして、WEリーグ村松邦子理事と海堀あゆみ理事によるセミナーに入ります。WEリーグがクレド(行動規範)として掲げる「みんなが主人公になるためにプレーする」を軸に、多様な生き方と夢が生まれる社会でみんなが主人公になれる社会を目指すことをテーマのひとつとして、まずは海堀理事が、WEリーグの理念や女子サッカーを取り巻く環境などを語りました。
特に、女性の障壁として例えられる「ガラスの天井」から着想を得たWEリーグの優勝トロフィーについての映像が流れると、参加者の視線が集中する場面も。
「今日は改めて、WEリーグがどのようなリーグで、どのような理念や思いを抱いているのか。選手たちを含めた女子サッカーを取り巻く環境などのお話をさせていただきました。表から見ると華やかだったり、うまくいっているように見えても、まだまだ伸びしろがたくさんあります。WEリーグが発足して5シーズン目。たくさんの壁を乗り越えて、ここまできました。フットボールの魅力を届けることはもちろんですが、同時に、今ある社会課題に対してメッセージを届け、皆さんとその課題にアプローチすることもWEリーグの存在意義です。現状に満足することなく、時代に合わせてWEリーグもアップデートしながら、誰もが輝ける社会を目指してみなさんと歩んでいきたいですね」と海堀理事。
続いて村松理事が登壇。社会課題についてのトークセミナーに進みます。「持続可能な社会とDE&I」「スポーツとDE&I」など、多角的な視点でテーマに沿った話が展開されました。
「DE&Iがなぜ必要なのか。世の中の状況については村松理事がとても詳しくご存知なので、ぜひセミナーでお話をいただき、勉強の機会にさせてほしいと思っていました。とても有意義なお話を聞くことができたと思います」(黄さん)
聞き入る参加者も真剣そのもの。たくさんの言葉にうなずきながら、メモを取る様子が見られ、充実のトークセミナーが終了しました。
続いてセッション2は、日本障がい者サッカー連盟の松田薫二専務理事、デフサッカー林滉大選手、原口凌輔選手をゲストに招いて、3対3 +デフの選手(4vs4)のウォーキングフットボールを行います。
競技に入る前に林選手、原口選手からデフサッカーや手話に関する説明が入りました。参加者も手話を学びながらコミュニケーション。明るい雰囲気となって、いよいよウォーキングフットボールへ。
今回は、参加者によって設ける特別ルールを、みんなで作成して進められました。たとえば、視覚に障がいのある参加者がいる場合、対戦相手も同人数がアイマスクをつけてプレーをするなどです。
2度目の試合に入る前には「実際にやってみてどうだったか」を問われ「指示を出す声がたくさんありすぎてわからないので指示役はひとりだけにする」など、意見交換をしながら、お互いの特性や強みを知り、それを活かす場になっていきました。
最後のセッションは、株式会社エンパブリック代表取締役でありソーシャル・プロジェクト・プロデューサーの広石拓司さんをファシリテーターに迎え、「みんなが主人公になれるを実現するために」というテーマで、DE&Iを自分事化していくためのグループワークです。
参加者は4つのグループにわかれて、ウォーキングフットボールに関する振り返りをディスカッション。「その場でルールを決められるのは、子ども時代の遊びのようで楽しかった」「アイマスクをしていると指示が本当に大事だと気づいた」など、体感したからこその発言が聞かれました。
また、無記名で参加できるアプリを使って社内のDE&I推進状況や社内環境などについて考えていきます。「ダイバーシティへの取り組みは5段階評価で3くらい」「忙しくて目の前のことしかできない」「部署独自の文化が良い方向にも悪い方向にも作用している」など率直な意見が見える化され、改めて、それぞれの前にあるハードルを超えていくためにどうしたらいいのかを考える時間となっていきました。
すぐに明確な答えは出ないものの、考えるきっかけや、お互いの考えを知る貴重な時間となって、約1時間に渡って取り組んだセッション3のグループワークは終了しました。
※視覚に障がいがあるメンバーに手話を伝達。
「クラシエ×WEリーグコラボDE&I研修」を終えて村松理事は「理念に共感していただいて、“一緒に取組みを進めていこう”という想いで、コラボ研修が実現できたことを嬉しく思います。DE&Iは、言葉で理解していても、“みんなの力を活かせるルール”とは何か、“どのようなコミュニケーションをとれば結果を出せるのか”、“どのような配慮があれば全員が楽しめるのか”を考え、体感する機会は限られています。半日の研修の中で、ただ“知る”だけでなく、一緒に体を動かして“体感”できたことは、大きな意味がありました。 DE&Iの実践で大切なことは想像力と創造性です。お互いの違いを尊重し、活かし合うことは、簡単そうで、とても幅広く、奥深い。その難しさと可能性を、ウォーキングフットボールを通じて気づいていただけたのではないかと思います。WEリーグがハブとなり、パートナー企業や地域のみなさまとともに「みんなが主人公になる社会」を広げていけたら―そんな未来への可能性を大きく感じた一日でした」と振り返ります。
また、参加者を代表して総務・人事室の柳岡祐紀室長は「2024-25 WEリーグ クラシエカップ決勝を拝見し、女子サッカーの魅力をすごく感じていました。クラシエはいい活動をしているなと思いましたし、今日、改めてお話を聞いて社会的に意義のある活動をしていることを知る機会になりました。WEリーグは、発足時から『女子サッカーを文化にする』と掲げられています。それは、本当にすごいこと。業務上、ダイバーシティとは何かを考えることは多かったのですが『必要だから』『世の中がそうだから』と、なんとなく思っていたように感じます。でも、そうではなく、難しくてもWEリーグさんのように取り組んで、それを文化にしていくことがとても大切です。社会的な価値をつくることに対して『もっともっと真剣に取り組まないと』と、改めて思い直す時間になりました」という言葉で研修は締めくくられました。
DE&Iとは何かを頭と身体で体感し、一人ひとりが気づきを得る時間となった『クラシエ×WEリーグコラボDE&I研修』。今回のコラボレーションを出発点に、WEリーグはこれからも「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する。」という理念を胸に、パートナー企業のみなさまと手を携えたさまざまな活動を進めていきます。
「ウォーキングフットボールで楽しくDE&Iを体験できるセッションもあったので、参加者一同DE&Iについて理解が進んだのではと感じます。研修内では配慮に関しても触れましたが、接する機会が増えると過度に意識していた配慮もより自然になっていくのかなと感じました。今回のようにWEリーグさんと一緒に取り組みを行うことで新たなきっかけや気づきがたくさん芽生えましたし、今後も、WEリーグの理念推進やビジョン、クレドなどを基点とした活動や考えを、もっと学ばせていただき社内展開をしていきたいです。このような取り組みを一度で終わらせるのではなく、継続的に進めていくことで社員一人ひとりが持つ多様な視点や発想を活かせる環境づくりも続けながら、パートナー企業として、一緒に取り組む意義を活かしていきたいと思います」
「DE&Iの取り組みは、とても興味があり参加しました。私自身は視覚に障がいがあり、ウォーキングフットボールは初めての経験です。でも、みなさんの温かなサポートや参加する人に合わせてみんなで一緒にルールを考えてつくることで、すごく楽しい時間になりました。また、配慮が必要な人ややりたいことができない人たちがいることを、デフサッカーの選手と触れ合い、海堀理事のWEリーグを取り巻くお話を聞いて、改めて感じました。自分だけを対象にするのではなく、いろいろな角度からダイバーシティを考えていかなければならないと思いますし、自分からも伝えたいことがあれば伝えていく機会をつくっていけたらと思います」
「DE&Iに関する取り組みとなると表面的な理解で止まってしまうこともあるかと思いますが、ウォーキングフットボールを行うことで自分事にすることができました。また、いろいろな方と交流する機会となり、上司の意外な一面を見るような場面もあるなど、新たな発見がたくさんありました。たとえば、視覚に障がいのある方に対しては『こうした方がいい』と決めつけてしまっているのかなと。それに気づき、本当の意味で目の前の相手を知ること、知ろうとする姿勢がとても大切だと学びました。今回の学びを今後の業務に活かしていきたいなと思います。WEリーグについても、ひとつのことを真剣に一生懸命に取り組んでいる姿はとても共感できます。同世代の選手たちの活躍を現地で応援したい気持ちが強くなりました」
*1 DE&I:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
*2ココラボクラシエ:https://www.kracie.co.jp/company/cocolabo/