2025年2月1日、ちふれASエルフェン埼玉がSFAフットボールセンターKAZOヴィレッジで「みんなの色でつなごう笑顔のWA」を実施しました。今回は、「サッカーを通してスポーツをする機会」をテーマにしたサッカー教室。参加するのは、加須市で活動するサッカー少年団の男女104名です。
ホームスタジアム(熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)近隣エリアとなる加須市での実施に至った背景には「3年ほど前に地域のお祭りでサッカー教室を開く予定だったのですが、悪天候だったために開催ができなかったんです。『残念』という声をいただいた中で、昨年もお声がけをくださって。でもスケジュールの都合でどうしても実施するのは難しい状況でした。そうした状況で、今シーズンもお話をいただいたんです。当初は選手4〜5名でもということだったのですが、3年越しとなる実施。待っていただいていた大切な機会ですし、選手全員が参加できれば、子どもたちにとって、きっと大きなプレゼントになる。プロスポーツに触れる機会があまり多くないという地域だからこそ、エルフェンとつなげることができたらという思いもあって、選手全員による『WE ACTION DAY』の活動として開催することになりました」とクラブスタッフは言います。
準備や運営、当日の進行を選手たちがすべて担うEL埼玉のWE ACTION DAY。今回もこれまでと同様に、今シーズン、リーダーを務めている大沼歩加選手、松久保明梨選手、園田悠奈選手の3名が中心になって進められました。
選手たちが描いた実施内容は①エルフェンショー②アイスブレイク③サッカーセッションという流れ。その中で、頭を悩ませたのは人数だったそう。
「これまでのサッカー教室などは、参加者もだいたい選手と同じくらいの人数がほとんど。ひとりの選手が1〜2名の参加者を見られるようなイメージで開催してきたのですが、今回は100人を超えるサッカー少年、少女が集まってくれました。全員を見て回れるかな。最後まで一緒にできるかなという部分に難しさを感じたんです。一人ひとりの責任とやることが、これまでの中で一番多いサッカー教室になったと思います」と大沼選手は、実施に至るまでの心境を振り返ってくれました。
104名という人数に加え、参加する子どもたちは園児から小学6年生まで、年齡もサッカー経験もバラバラ。そうした状況下にあっても「みんなで楽しむ」という選手たちの思いは変わらずに、エルフェンショーやアイスブレイクは全員で行い、サッカーセッションはグループ分けをして行うことにしたと言います。
「サッカーの技術的な面、スピード、体の大きさもみんな違います。その中でサッカーをするならば、学年ごとに分けないと楽しめなくなってしまう子もいますし、ケガなどにつながってしまう恐れもあります。そこで、小学5、6年生のグループといったように、学年ごとに3つのグループに分けて実施することにしました。練習内容をそれぞれの年齢層に合わせて考え、実行していく中で、選手のみんなは自分たちより多い人数を見ていく大変さがあったと思います。でも選手一人ひとりが子どもたちみんなとたくさん触れ合ってくれて、楽しそうな姿が印象的でした」と大沼選手。
グラウンドにたくさんの笑顔が広がりながら、「みんなの色でつなごう笑顔のWA」は、進んでいきました。
まず盛り上がったのは、選手たちがポジションごとに分かれてデモンストレーションなどを見せる「エルフェンショー」。このエルフェンショーを実演するにあたっては選手たちも緊張するようで、「自分たちの練習後に(エルフェンショーの)練習をしているんです」と大沼選手は舞台裏をそっと教えてくれました。
緊張気味の選手たちも、実演となれば真剣そのもの。これが“プロサッカー選手”という美技をどんどん披露していきます。
「エルフェンショーは、子どもたちもとても盛り上げてくれたんです。特にシュート。まずは選手がお手本を見せ、次に子どもたちから希望を募りました。GK陣が実際にゴールを守っているところにシュートを打ってもらったんですけど、1本もゴールを許さなかったんです。WEリーグの選手たちのすごさや強さを子どもたちにも感じてもらえたと思います。何よりGKが子どもたちのシュートを受けることは、GKのみんなが考えてくれたことなんです」(大沼選手)
プロだからこそ、1本1本が本気の勝負。自らの発案に思いを乗せて、選手たちは子どもたちと向き合いました。その“矜持”に触れることで、子どもたちの胸に残った悔しさや「かっこいい」というあこがれの気持ちが、サッカーを続けることや楽しむことへの糧になります。そこに、EL埼玉らしさがつまった触れ合いの形がありました。
盛り上がりを見せたエルフェンショーを終え、アイスブレイクを挟んで、いよいよサッカーセッションへ。
園児や低学年向けグループにはレクリエーションや遊び心のつまった要素を多く含め、小学3〜4年生が対象となるグループにはボールコントロールの基礎やシュート練習などの実践形式。高学年グループは、より技術面を特化した内容を組んでの実施となりました。
「普段、サッカーをしている子たちなので、いつもの練習とはちょっと違う要素を取り入れた形にしました。選手たちも『もっとこうするといいよ』とアドバイスをしながら、みんなと接していたんです。子どもたちも、その声に応えるように頑張ってくれたのが、すごくうれしかったですし、良かったなと思います」と大沼選手。
どのグループもサッカーとなると夢中になって取り組む子どもたち。選手たちと一緒にボールを蹴り、充実感が広がる時間となりました。
当日はケガのため一緒にボールを蹴ることは叶わなかったものの「がんばってね」「ケガを治してね」という子どもたちの言葉に「元気をもらいました」と話す大沼選手。改めて地元である埼玉県を舞台とした活動に関して「男女関わらず、普及活動は大事ですし、もっと選手たちを身近に感じてもらえたらと思います。一緒にサッカーをすることで『サッカーは楽しい』と思ってもらえたらうれしいですし、実際にプレーをする姿を見せて『こういう舞台でサッカーがしたい』と思ってもらいたい。それがサッカーを続けることにつながっていきます。だからこそ、自分も含めて選手が楽しくサッカーをしている姿を見てもらうことは、とても大切なこと。その思いで取り組んでいます」と口にします。
実は、今回のサッカー教室で大沼選手には、小6の女の子と交わした言葉が心に残っていました。
「サッカーを続けるかを聞いたとき、彼女は『続けない』って言っていたんです。『続けてほしいんだけどな』と伝えたんですけど……続ける場所がないのかな、と。もちろん、いろいろな事情もあったりすると思うのですが、チームを見つけるのが大変なことは大きいと思います。私自身は(小さい頃に)チームが見つかりましたが、友だちは時間をかけて遠くのチームに行っていた姿も見てきました。そういうことを考えると、やりたくてもやれない人がいる。環境づくりも本当に大事だなと思います」(大沼選手)
子どもたちとの触れ合いの中で気づくことがあり、知ることがあるからこそ、スタジアムの外に出て活動すること、普及活動にも、力を込めます。そして、そこで育まれているものが、EL埼玉をより輝かせることにつながっていました。
「WE ACTION DAYの出発点となったのは、選手たちが主役になって選手たち自身がつくっていくというWEリーグの理念でした。選手たちを巻き込みながら続けてきて、それがエルフェンの伝統になりつつあります。選手同士がコミュニケーションを取って、納得して取り組んでいる。手が届かない部分などをスタッフがフォローする形です。選手が主体性を持って自主的に取り組んでいるので、それが新加入の選手や若手選手などにも伝わるんです。見て育っていく。それがチームカラーになっているのかなと思います」(クラブスタッフ)
選手たちが主体的につくりあげていく活動の中で、悩みや迷うことがあれば、クラブスタッフやスクール活動を行うコーチたちに相談できる環境をつくり、クラブ一丸となって進んできたEL埼玉。今では選手たちがみんなの意見をまとめながら、ポスター配布などのホームタウン活動などにも積極的に参加し、地域とのつながりを深める一翼になりつつあると言います。
そうした中で、掲げたイベント名は『みんなの色でつなごう笑顔のWA』。そこに選手たちの思いが込められていました。
「今シーズンのWE ACTION DAYでは『みんなの色でつなごう笑顔のWA』をテーマにして発信していきたいと、選手たちがつくってきたんです。いろいろな『WA』を大事にしようという思いで、今回も取り組んでいました」(クラブスタッフ)
みんなをひとつにする“輪”にもなれば、互いに手を取り合う“和”にもなる。ローマ字で描かれた『WA』に込められた様々な思いを胸に、今後はサッカーの枠を飛び越えた子ども食堂などの実施も考えていると言います。
選手たちの手によって紡がれていく『WA』が、大きく広がるように。EL埼玉の活動は、これからも続いていきます。