パリオリンピック2024 女子サッカー アジア最終予選のメンバーにWEリーグからは11名の選手が選出されました。
WEリーグから選出されたメンバーはこちら。
今回は選出されたメンバーの中から5人のFP(フィールドプレー)をピックアップ。2023-24 WEリーグのデータをもとに5選手の特徴を紹介します。
1人目は三菱重工浦和レッズレディースのDF石川璃音選手。
・ 1試合でファウルをする数:0.21
・ イエローカード:0
・ ブロックしたシュートの確率:62.0%(リーグ17位)
・ 守備デュエル成功率:74.29%(リーグ19位)
石川選手の特徴は「ファウルをせずにボールを奪う技術」です。石川選手が出場した5試合で石川選手が犯したファウルはわずか1。1試合平均0.21というファウルの数は石川選手がファウルをせずにボールを奪う技術に長けていることを示しています。
石川選手のボールを奪う技術はスタッツでは分かりにくく、シュートをブロックする確率は62.0%でリーグ17位、守備デュエル成功率は74.29%でリーグ19位。スタッツの数字をみる限りでは、ボールを奪う技術に長けている選手とは言えません。
しかし、「シュートをブロックする確率」のスタッツをリーグ6位以上のチームの選手に対象を絞ると上から5番目、リーグ3位以上のチームの選手に絞ると上から3番目に該当します。
「デュエルの勝率」もリーグ上位6チームの選手に対象を絞ると上から11番目、リーグ上位3位以上に絞ると上から4番目に該当します。
守備に関するスタッツは上位チームのDFは低くなる傾向がありますが、上位チームを対象にすると、石川選手がボールを奪う技術に長けているということをスタッツが示しています。
石川選手が相手選手とマッチアップしたとき、どのようにファウルをせずにボールを奪うのかを注目してみてください。
2人目はサンフレッチェ広島レジーナの中嶋淑乃選手。
・ 1対1のドリブル回数:40回(リーグ5位)
・ 1対1のドリブル成功率:47.5%(リーグ22位)
・ 前方への走り:3.09(リーグ7位)
・ ゴール数:1点
中嶋選手といえば左サイドをドリブルで駆け上がるプレーが印象に残っている人もいると思いますが、1対1のドリブル回数は40回でリーグ5位、1対1のドリブル成功率は47.5%でリーグ22位。他の選手と比べてドリブルに関するスタッツが圧倒的に秀でている、というわけではないことが分かりました。
中嶋選手に関するスタッツで注目したのは「被ファウル」の数です。被ファウルとはファウルされる数のことで1試合平均0.4回は後述する藤野選手の1.73回と比較しても少なく、中嶋選手のドリブルはファウルで止めることが難しいため、ファウルを受ける回数が少ないのではと推測されます。
また中嶋選手は前方へのランニングの回数が1試合平均3.09回でリーグ7位を記録しており、ドリブルだけではなくボールを受ける動きにも強みがある選手であることが分かります。
相手DFがファウルさえもできないドリブルと、ボールを受けるために仕掛けるランニング。中嶋選手の凄さは実際に試合で観ることでより理解が深まるはずです。
3人目はWEリーグから選出されたFPの中で最も多くなでしこジャパンで出場(2024年1月時点で75試合)しているINAC神戸レオネッサの田中美南選手。
・ シュート数:33本(リーグ1位)
・ ヘディングシュート数:9本(リーグ1位)
・ キーパス数:7本(リーグ3位タイ)
・ xG:0.57
田中選手の特徴を示すスタッツは「シュート数」。2023-24WEリーグ 第7節までに記録したシュート数33本はリーグ1位。左右両足のシュートだけではなくヘディングも強く、ヘディングシュート9本はリーグ1位。ペナルティエリアの中であればどこからでもシュートを打てる技術を備えた選手です。
田中選手はシュートだけの選手ではなく、明確なゴールチャンスを生み出したパスの回数を示す「キーパス」の数7本はリーグ3位タイ。味方へのシュートチャンスを作ることも上手い選手です。
ゴール期待値(xG)0.57は600分以上出場している選手の中ではリーグ2位。(1位は清家選手の0.75)田中選手がペナルティエリア付近でボールを持った時はシュートチャンスが生まれる確率が高いのでぜひ注目してください。
4人目は日テレ・東京ヴェルディベレーザの藤野あおば選手。
・ シュート数:31本(リーグ2位)
・ キーパス数:7本(リーグ3位タイ)
・ 前方への走り :30回(リーグ1位)
・ xG:0.49
藤野選手も田中選手同様に「シュート数」が多く、2023-24 WEリーグ 第7節までに記録したシュート数31本は田中選手に次いでリーグ2位。藤野選手の場合は田中選手とは異なり、ヘディングシュートは2本のみで、正確にボールを扱う技術を活かしてシュートを打つのが特徴です。また田中選手との共通点としては明確なゴールチャンスを生み出したパスの回数を示す「キーパス」の数7本は田中選手と同じくリーグ3位タイ。味方へのシュートチャンスを作り出すのが上手い選手でもあります。
藤野選手の特徴は「ドリブル」と「ランニング」を上手く使い分けられる点にあります。1試合平均の1対1のドリブル回数6.36はリーグ4位、成功率も63.64%でリーグ7位とドリブルでシュートチャンスを作り出すプレーが得意な一方で、前方へのランニングの回数30回(1試合平均4.33回)はリーグ1位。ボールを運ぶプレーだけではなく、ボールを受けるプレーも多いのが藤野選手の特徴です。
ゴール期待値(xG)0.49は600分以上出場している選手の中では、田中選手に次いでリーグ3位。ボールを持っている時も、持っていない時も、藤野選手がどんなアクションを仕掛けているのかを注目してみてください。
5人目は2022年7月以来のなでしこジャパン(日本女子代表)選出となったサンフレッチェ広島レジーナの上野真実選手。
・ ゴール数:5得点(リーグ1位)
・ 枠内シュート率:58.3%(リーグ1位)
・ 1試合平均のオフサイド数:0.15
・ xG:0.31
上野選手は2023-24 WEリーグ 第7節終了時点で得点ランキング1位の5得点を記録していますが、特筆すべきは枠内シュート率が58.3%でリーグ1位を記録していることです。
上野選手のシュート数は12本と田中選手(33本)や藤野選手(31本)の半分以下ですが、12本中10本がペナルティエリア内でシュートを打っており、ゴールから近い位置でシュートを打つことによって枠内にシュートを入れる確率を高めていると言えます。
ペナルティエリア内でシュートを打つことはDFもいるので簡単ではありません。上野選手がペナルティエリア内でシュートを打つことができるのは、相手を外す技術に長け、スペースがなくてもフリーになることができるからです。多くの人がボールに集中している時、上野選手は相手との駆け引きからマークを外して、味方からのパスを受け、シュートチャンスを作り出します。
1試合平均のオフサイドの数も0.15(7試合でわずか1)とオフサイドにならずにボールを受ける技術も持ち合わせています。
上野選手がペナルティエリア内でいかに相手と駆け引きしてシュートチャンスを作ろうとしているか。上野選手のボールを持っていない時の動きに注目してください。