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インタビュー
2023.03.30
【WE INTERVIEW #60】~井上陽菜選手(ノジマステラ神奈川相模原)~


体力がきつくなる時間帯でもスプリントで勝負!

意を決してセレッソ大阪堺レディースからノジマステラ神奈川相模原へ移籍し、WEリーグ開幕を迎えようとした直前、井上陽菜はケガで長期離脱をすることになった。それでも持ち前のポジティブさで焦りを封じ、ピッチに戻って来た。サイドバックとしてアグレッシブな攻撃もあれば、全力守備で身体を張る。どんな状況でも彼女を前に向かせるのは、走り切ることで生まれる自信だった。

——大学では外国語学科を専攻していたんですよね。

外国の言語を学びたいと思い、大学に進学してからスペイン語を選択しました。サッカーで海外に行くことを考えると、スペインってサッカーぽいじゃないですか。その“ぽさ”で決めました(笑)

——ジェンダー関連のゼミに入っていたと耳にしたのですが、きっかけはありますか?

ジェンダーの問題にも興味はありましたが、専攻していたスペイン語の先生が担当だったことがきっかけです。難しいテーマではありましたが、私はサッカーをプレーしていて他のゼミ生よりもスポーツ界のジェンダーに関する状況に触れていたので、そういった観点で発言できることは多かったですね。

——卒業論文ではどう考察しましたか?

私が4回生になった時にちょうどWEリーグが開幕したので、知名度をリサーチしてみたのですが全然知られていませんでした。男女の観客数とテレビの放映数の差をもとに、改善するためにはSNSなどを活用して発信し、認知度を上げることが先決だと結論付けました。

——井上選手が考えるこんな“WEリーグにしたい”というビジョンとは?

誰に対しても近い存在でいたいです。私にとってサッカー選手に限らずプロスポーツ選手は遠い存在でした。私が選手の立場で地域のみなさんと関わったり、イベントに参加したりして、沢山の方と触れ合う機会をもっと増やしたいと思いました。サッカーに興味がない人でもプロスポーツ選手に関わることで興味を持ってもらえたら、試合を観に来てくれるのかなと思います。

今までは小学校への訪問など小さな子どもが対象になるイベントが多かったのですが、私と同世代の方も楽しめるイベントがあっても良いのかなと思います。有名人が来るなら足を運ぶかも(笑)。その先にサッカーがあるでも良いと思います。

——WEリーグ初年度の開幕直前に前十字靭帯損傷という大ケガを負いました。

メンタル的には辛かったですが移籍してWEリーグとしても1年目だったので、落ち込んでいる場合じゃない、というかもうやるしかありませんでした。前十字靭帯損傷は2回目だったので、リハビリ期間の8か月が一瞬で過ぎていきました。1回目の時はもう辞めようかなと思うこともありましたが、2回目は回復への道のりが見えていた分、前向きに向き合うことができました。私は他の人よりはポジティブだと思います。明るさでは誰にも負けません!

——それは滲み出ています(笑)

そうですか?良かったです(笑)。ピッチでも鼓舞する声を出すタイプではないのですが、ボールを呼ぶ声はデカいです!ありがたいことにめちゃくちゃ声が通るんですよ(笑)

——WEリーグ2年目で復帰して、ご自身の中で変化はありましたか?

もう大きなケガは出来ないので、練習後のケアはしっかりとするようになりました。あとは筋力が落ちたので食事面にも気を遣っています。

膝をケガしたことで太ももとハムストリングを一番鍛えています。菅野将晃監督の練習は走るメニューが多くて初めは辛かったのですが、今は慣れました。練習のおかげで試合の後半になってもスプリントを出すことが出来るようになったので、大きな効果をピッチで実感しています。

——今シーズンになって選択肢として新しく増えたプレーはありますか?

サイドハーフがパスを受ける前にサイドバックの私が動き出して、3人目の動きとしてボールをもらうことが出来るようになりました。それは走力の向上があるからこそで、試合でどんどん出していけると思います。

もちろんゴールも狙いたいです!私は本来、守備のポジションなので攻撃に参加した後に戻るのですが、アンカーの選手が下がってくれたりサイドハーフの選手と入れ替わったり、そのまま前にいてもいいよと言ってもらえるので、自分が空けたスペースを気にせずにゴールを狙うことが出来ています。

——今季チャレンジしたいところは?

スピードが欲しいです。私の課題はサイドで速い選手と1対1になった時の対応だと思います。攻撃面でもオーバーラップはタイミングを合わせることでなんとかなることがありますが、ドリブルで仕掛ける時にスピードが必要だと感じます。

——負けたくない選手はいますか?

一緒にプレーしていた選手には負けたくないです。先日のINAC神戸レオネッサ戦では小山史乃観選手とマッチアップして、元チームメイトとの勝負は燃えました(笑)。同じチームですごいと思った選手はやっぱりなでしこジャパンに呼ばれていますし、大いに刺激を受けています。

——いよいよシーズン後半戦。どんなプレーを見せてくれますか?

チームは「5位以上」を目標に掲げているので、勝てる試合を落とさず、引き分けを勝利に、劣勢な状況下でも諦めず戦い抜きます。そのために、練習でも貫いている「最後まで走り切るプレー」をチーム全員でやっていきたいです。ディフェンスラインからパスを回してどれだけ前線に運ぶことができるか、そして個人的にはしっかりゴールを狙っていきたいです!

(インタビュー・構成=早草紀子)




【プロフィール】

井上陽菜(いのうえ ひな)

1999年9月16日生まれ、大阪府出身

MF、背番号14

摂津イレブンJSC → セレッソ大阪堺レディース → ノジマステラ神奈川相模原

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