2025年4月2日、公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)は、第9回 WE ACTION MEETINGをオンラインで実施しました。
各クラブから選手たちも参加した今回。2024年11月に開催した第8回に続き、WEリーグクラブスタッフ、WEリーグ事務局スタッフ、WEリーグパートナー企業、スポーツ団体、メディア関係者58名が集い、それぞれの視点で活発なディスカッションが行われ、具体的なアクションプランが生まれました。
2024-25シーズンは「女子サッカーにおける「する」「みる」「関わる」機会を増やすためのWE ACTIONを」をテーマとしているWE ACTION MEETING。2024年11月に実施した第8回では、「する」「みる」「関わる」の中からテーマをひとつ選び、ターゲット層や施策案などグループにわかれて議論する中、最も多く選ばれたテーマが「みる」について。第9回のWE ACTION MEETINGは、この「みる」に焦点を当て、具体的なアクションプランを考えていく時間となりました。
今回も6つのグループにわかれた参加者は、①誰が実施するのか=「Who」、②いつ実施するか=「When」、③どこで実施するか=「Where」、④誰を対象に実施するか=「Whom」、⑤どのように実施するか=「How」の、5つのポイントに沿って議論をスタート。
様々な意見が交わされる中でポイントとなったのは、“選手の声”、“地域”、“タッチポイントづくり”です。
まず、タッチポイントに関しては「サッカーに興味のない人、スポーツを見るのが苦手な人でも見る角度を変えたり、知ったりすることで“みる”ことへのきっかけにできれば」、「近くで試合があるから行こうというきっかけが大切」といったように新規ファン層やこれまで女子サッカーに触れたことがない層へのアプローチとして、大事な要素であることが再認識されました。
その上でクラブの現状として「ターゲットを決めて、きっかけづくりを考えてもできることが偏り、施策を実施するのは難しい」という声も聞こえてきました。そこで大事にしているのはクラブが在籍する“地域”です。
「各クラブは、ホームタウンや地域の人が来てくれるような施策も考えていると思います。チームや選手が地域に根づいていく、入っていくことはすごく大事なこと。地域によっては、それがクラブとしての強みになりますが、そこは地域性もあるので、地域に沿った施策やアプローチも大事だと思います」。
“地域”に関しては「ホームタウンの方々に試合に来てもらいたいとチラシ配布などをしても、実際に来場してくださっているかわからない部分があります」という課題観から「地域イベントなどで選手たちに触れ合うと、“また会いたい”と次は試合に来てくれます。こうしたタッチポイントを増やすことは大事ですが、選手たちが毎回イベントに出られるわけではありません。そこで、同時配信やSNSの活用をしながら選手たちの魅力を発信することで“きっかけ”づくりになるのでは」といった手応えと施策につながるような発言も出てきます。
このように“タッチポイント”や“地域”といったキーワードが浮かぶ中、施策の軸となる大きなポイントとしてあげられたのが“選手”です。“選手の魅力”については、WEリーグや女子サッカーの魅力にも直結する部分。選手たち自身も、その重要性をよくわかっており、今回参加した選手たちからも盛んに、抱いている思いが聞こえてきました。
「単純なサッカー競技としては男子も他のカテゴリーあるので、女子ならではの良さ。思い切りよくプレーするようなところに加えて、サッカー以外の“人”としての部分を伝えるのも大切だと思います。女子サッカーならではの親しみやすさは見てほしい」
「同年代の女性に見に来てほしいという思いがあります。その中で選手一人ひとりのストーリーや経験、チームの歴史などを知ってもらえたら」
選手一人ひとりのストーリーについては、前回のWE ACTION MEETINGでも意見が出ていたもの。選手たちをより知るためのアプローチ施策のひとつですが、このように選手を知ることでファン(=推し)になり、試合に見に行く“きっかけ=タッチポイント”も生まれていきます。
そして、「選手たちからも個々の魅力発信について、サンフレッチェ広島レジーナさんが先日行っていた選手紹介動画を作りたいというような話が出ています」とクラブ関係者が話していたように、今回のWE ACTION MEETINGでは、選手たち自身も参加して作り上げていく“WEリーグの形”“WE ACTIONの形”が見えてきました。
また、他クラブが実際に行ったWE ACTION DAYやスタジアム施策などもヒントとなっており「お母さんたちをターゲットに考えると安心できるスタジアムづくりは大切。ノジマステラ神奈川相模原さんの芝生席は、子どもたちが伸び伸びとしていてとてもいい雰囲気だと感じます」「ジェフ千葉レディースさんが先日行っていた小学校とのコラボはすごく魅力的。それをベースに監督体験やインタビュアー体験などもできたら、スタジアムに行くきっかけになるのでは」と、今回も垣根を超えた充実の議論になりました。
1時間を超えるディスカッションを終え、各グループからアクションプランが発表されていきます。
プランとしてあがったもののポイントは大きく分けて2つ。まずは、選手たちが参加するものです。たとえば、選手たちの得意にポイントを置き、パートナー企業と協力をしながらコラボメニューを考えていくものやサッカー以外のイベント開催で選手と交流するものなど。選手たちが参加していたため、実際の声が反映されたアクションプランが考案されました。
もうひとつはターゲットをファミリー層やライト層に絞ったもの。「公園感覚で来てもらえるように子どもが楽しめるブースを作る」「リアルなお仕事体験」といった参加型から、「誰もが楽しめるイベントなども記載された年間カレンダーの作成」など、試合日だけに限らない幅広いアイデアも登場しました。
その中で、どのプランにも共通していたのは「いきなりサッカー観戦をするのはハードルが高いのでは」という懸念点から、より気軽に親しめ、足を運びやすいタッチポイントづくりが意識されていたことです。そのうえで、WEリーグや女子サッカーの良さでもある“身近さ”“親近感”を届けられるように、スタジアムにおいても「サッカーをみる」だけではない体験づくりが盛り込まれていました。
WEリーグならではのアクションプランに、各グループの発表を聞いた参加者からは「皆さんの本気度が感じられました。この思いがあればWEリーグのファンを増やせると信じています。今回の企画をさらに磨いて、必ず実現させましょう」(読売新聞東京本社 日高徹生さん)という意見や「女子サッカーやWEリーグの良さを知る機会にもなり、その良さをどうすれば多くの方に伝えることができるのかを考えるきっかけにもなりました。この経験を今後の女子サッカー、WEリーグの発展につなげていけるよう尽力していきたいと思いました」(三菱重工浦和レッズレディース 櫻井まどか選手)という声もあがるなど、それぞれに刺激や、新たな思いも芽生えるWE ACTION MEETINGになりました。
今後は、今回考案されたアクションプランの中から、来シーズンの実現に向けての精査や準備が進められていきます。
今回も充実した時間となった第9回WE ACTION MEETING。最後を締めくくったのは、参加者を代表して挨拶をしたS広島Rの福元美穂選手、海堀あゆみ理事の印象深い言葉でした。
「先日実施した1万人プロジェクトでクラブの本気度をすごく感じました。各クラブ、選手たち、リーグのみなさん、関係者のみなさんが“本気度”を上げたら、もっともっと魅力あるリーグになると思います。それを実現するために地道な活動も大切ですし、地域や企業とのつながりも大事です。もっともっといろいろな方々を巻き込んで、WEリーグ全体を盛り上げていけたらいいなと思いますので、これからも一緒にがんばりましょう」(福元選手)
「WE ACTION MEETINGは、WEリーグを通して、パートナークラブ、メディア、関連団体のみなさんが一同に会し、女子スポーツの社会的意義や課題を話し合い、実行に移していくことを目的としています。福元選手が話してくれたように女子サッカーやスポーツを盛り上げていくために、“本気度”を上げることは、とても要素だなと私自身も感じました。みんなで本気度を上げていくと、小さなアクションがどんどん大きなアクションにつながっていきます。ぜひ、それぞれの立場でできることを一緒に頑張り、女子サッカーをともに盛り上げていけたらと思います。ありがとうございました」(海堀理事)
今回あがった様々な施策案を、来シーズンの実現に向けて準備を進めていくWEリーグ。関わるすべての人と、“本気度”を高めながら起こしていく“WE ACTION”のひとつが、いよいよ来シーズン、花開いていきます。
パートナー企業様や関連団体のみなさまと直接、自分の言葉でお話し合いなどはできないので、今日の活動の中で改めてお互いを知るきっかけになったと思います。より理解を深めて同じ目標を目指しながら、関わるすべてのみなさんが幸福に感じるものを見出す話し合いができ、すごく良かったです。実際に話し合いをしたことが実現していけるように一人ひとりが心がけて行動に移していくことが大切だなと改めて思いました。
それぞれのグループが違った観点から企画を考えていて、新しい学びがあり、いろいろな方向性から集客ができると思いました。福元選手のお話にもあったように、各クラブなどの本気度が大事になっていくと思うので、選手の立場からできることをやりたいです。
選手、パートナー企業、クラブ、リーグの強みをすべて融合させた企画ができたので、引き続き検討を進めながら実現をして、WEリーグを「みる」きっかけ作りを、みんなで作り上げていきたいです。
今回のテーマ「みる」から展開し、どんな人に見てもらいたいかについて意見を求められたS広島Rの福元選手が、「子どもたちにプレーを見てほしい。子どもたちが来てくれるとその家族も来る。そうすれば家庭でもサッカーの話が出る。そういう人たちの日常に、(女子サッカーが)入り込んでいけたら幸せ」とおっしゃっていました。選手にとっての“幸せ”が、そういったシーンにあるとことにハッとしましたし、こうした選手たちの価値観がスタジアムやWEリーグの安心感につながっているのではと思います。WEリーグ、女子サッカーの魅力がどうしたらより広く伝わるかというところは、実況の観点からもいつも思案していますが、みなさんが様々な角度からどのようにWEリーグを見ているのか。WEリーグがどうあってほしいのかという思いなども知ることができ、とても有意義な時間となりました。こうしてたくさんの方たちと作り上げていくWEリーグの進め方も素晴らしいなと感じています。